突然、内容証明や電話で慰謝料請求された!
その時、あなたはどのように対処すべきか
数百件の慰謝料トラブルを解決した弁護士が経験に基づき徹底解説します
第6回
1 それぞれの手段のメリット・デメリット
(1)電話交渉のメリット・デメリット
①メリット
書面交渉と比較して早期の解決が期待できます。書面交渉の場合、書面の作成・郵送という手順を経るため、どうしても交渉に時間がかかってしまいます。
また、相手方と直接話すことになりますので、会話の中から相手方の意図・相手方夫婦の状況を推測したり、こちらに有利な情報を引き出せる可能性もあります。
さらに、対面交渉の場合、その場で強引に示談書にサインさせられる懸念がありますが、電話であれば検討不十分な状態で示談書にサインすることを防ぐことができます。
②デメリット
こちらに有利な情報を引き出せる点はメリットですが、反対にいえば、不用意にこちらに不利な情報を相手方に与えてしまう可能性があります。
特に、弁護士との電話交渉の場合、交渉のプロである弁護士は、あなたから相手方に有利になる情報を引き出そうとするでしょう。
状況によりますが、弁護士から電話交渉を求められた場合、可能であれば「弁護士に相談後、追って回答する。」と答え、電話での回答は避けた方が良い場合もあります。
(2)書面交渉のメリット・デメリット
①メリット
電話交渉とは異なり、事前にこちらの主張を十分に検討することができます。したがって、不用意にこちらに不利な情報を相手方に与えてしまうことを防止できます。
また、送付した書面の送付時期・内容を証拠化できるメリットもあります。
例えば、不倫の慰謝料請求権は、相手方が「損害を知った時」から3年経過すると消滅時効により請求権が消滅します(民法724条)。
もっとも、3年経過すれば自然に消滅するのではなく、「時効の援用」をしなければ請求権は消滅しません。
この点、「時効の援用」とは消滅時効制度を利用することを相手方に伝えることを言います。
この時効の援用は口頭でも有効ですが、通常は時効を援用した事実(時期・内容)を証拠として残すため内容証明郵便で行います。
このように証拠化する必要がある場合は書面で行うべきです。
具体的なケースはレイ・オネスト法律事務所にご相談下さい。
②デメリット
書面の作成・郵送という手順を経るため、電話交渉・対面交渉と比べ、交渉に時間がかかる可能性あります。
また、文章の場合、どうしても冷たい印象を与えてしまいますので、「反省していない。」「誠意を持って対応していない。」等思われてしまう可能性があります。
もっとも、この点は、表現をよく検討することでクリアできるでしょう。
また、メリットのところで書面の内容を証拠化できると説明しましたが、反対にいえば、相手方に「(こちらに不利な)書面を証拠化されてしまう」リスクがあります。
例えば、虚偽の事実を告げることは、裁判になった場合、慰謝料の増額事由となる可能性がありますが、書面で虚偽の事実を行った場合、その書面を証拠とされる可能性があります。
したがって、送付する前に弁護士に相談して十分に書面の内容を検討する必要があります。
(3)対面交渉のメリット・デメリット
①メリット
一度の交渉で解決する可能性や書面交渉と比較して誠意を伝えやすいという点がメリットとして挙げられますが、デメリットが大きいので、対面交渉は基本的にお勧めできません。
②デメリット
もっとも大きなデメリットは、「その場で示談書にサインさせられる可能性が高い」ということです。
対面交渉の場合、事前に相手方に有利な内容の示談書を準備してから交渉に臨む相手方が非常に多いです。また、相手方は交渉内容を録音していると思った方が良いでしょう。
何時間も相手方に問い詰められ、認める必要のない事実を認めてしまったり、相場からかけ離れた高額の示談書にサインしてしまう方がたくさんいます。
脅迫や暴行を受けて示談書にサインした場合、示談書の有効性を争うことはできますが、脅迫や暴行と認定されなかった場合、相場よりかなり高額の慰謝料だったとしても、示談書どおりの金額が認められる可能性があります。
したがって、対面交渉は避けるべきです。